認知症フォーラム
神戸市で来月(9月)4,5日「G7保健大臣会合」が開催されるのを記念して、開催50日前フォーラム「認知症と共生する社会に向けて」が開催されました。(2016年7月23日)
案内チラシ
お二人の先生による基調講演と、認知症を支援する様々な機関の方々によるパネルディスカッションの2部構成です。
○前先端医療振興財団理事長の井村先生は、現在は、関西健康医療創生会議議長のお立場でのご挨拶
ベビーブームの世代が2025年には75歳以上になる。単に人数が増えるだけではなく、寿命も伸びることになる。2025年には、600万人〜800万人が認知症になるとも言われている。神戸大学名誉教授の前田潔先生は、神戸市の「認知症対策監」に就任していただいて、少しでも減らせないか対策にあたっていただいている。
○久元市長
G7保健大臣会合にあたって、医療産業都市に取り組む神戸市として災害医療など、記念のシンポジウムを行ってきている。100歳以上の方は、神戸市で941名いらっしゃる。65歳以上の健康状態はそれぞれでもある。認知症の方は44000人となっており、正面から取り組んでいきたいと思っている。認知症でも、先端的な研究が行われており、恩恵が市民にいきわたるよう努めていきたい。
○講演
座長 神戸市認知症対策監 神戸大学名誉教授 前田潔先生
講演 東京大学名誉教授 松下正明先生
・認知症は、5才刻みで倍増する。
・85歳以上の1/4が認知症となり、そのうちアルツハイマー・アルツハイマー混合型の割合は9割に及ぶ。
・アルツハイマー病という病気は存在しない。認知症は心の状態であり、ともに生きることが大切。
・アルツハイマーに至る原因は不明であるが、アミロイドβが作用して、神経細胞が変性することはわかってきた。
・「物を盗られた」「怒りっぽい」などの症状が現れる。
・CT、MRI、SPECTなどの画像診断によってわかるが、臨床での診断が重要である。
・現在、4種類の治療方法がある。
・正常者〜認知症の境界は、明らかではない。
・アルツハイマー病の薬物療法は、脳の老化現象を遅らせることによる。
・「認知症」と言われると、心に失望感が生じる。「喪失反応」心の叫び
・ある患者さんの奥様の例
ひとりで、ぶつぶつと独り言を言ったり叫んだりすると相談され、何を言おうとしているのか、一度、ちゃんと聞いてみてあげてとアドバイスしたら、「お前はどうしてクリスチャンになったのか。どうして神を信じるようになったのか」と言っていたことがわかり、ずいぶん前にクリスチャンになったことなのに驚いた。どうしてそうなったのか説明をしたら、静かになった。
<川原田追記 私は、このお話はとても需要だと感じました。。。>
・社会参加が重要になる。軽い症状の時に、ボランティア活動に参加したりしている人は進み具合が少ない。
・地域の力、ソーシャルキャピタルが必要。
・行政は、地域が力をつけるよう努力すべき。
・沖縄の大家族制、家族や友人に囲まれて生きることが良い。
・認知症は、特別なものでなく、単に老化現象である。誰でもなることである。
・自分自身も認知症になるということを理解した上で、認知症と共に生きていくこと。
○大阪大学大学院医学研究科準教授 田中稔久先生
・認知症の画像診断
アミロイドβ・・・老人班 リン酸化タウ・・・神経原繊維の変化
・治療薬は4種
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
ドネペジル
ガランタミン
ソバチグスミン
NMDA受容体拮抗薬
メマンチン
・9か月から12か月くらいは遅らせることができる。
・A(アミロイド)βには、Aβ42(1割)とAβ40(9割)があり、Aβ42の毒性が強いことが知られている。
・Aβの抗体を作る能動免疫法による医薬品開発も行われたが、臨床研究時に脳脊髄膜炎を発症して中止になった。
・よって、現在は、受動免疫法によるものが研究されている。
<川原田追記
Aβ40は、アミノ酸が40個つながったもの、Aβ42は、アミノ酸が42個つながったものです。
γセクレターゼという酵素が分解する位置によって、Aβ40かAβ42になります。
医薬品の一般名(商品名/医薬品メーカー)
ドネペジル(アリセプト/エーザイ)
ガランタミン(レミニール/ジョンソン&ジョンソン)
リバスチグミン(イクセロンパッチ/ノバルティスファーマ、リバスタッチ/小野薬品工業)
メマンチン(メマリー/第一三共)
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・γセクレターゼで切断されるAβ42は、毒性(凝集性)が高い。
・γセクレターゼで切断される際に生じるNotchタンパク質は、生存に必須のタンパク質であり、生成を阻害してはいけない。
・γセクレターゼ阻害剤/γセクレターゼモジュレータの医薬品が研究開発されているが、現時点ではまだ成功していない。
・脳脊髄液での診断は可能になってきている。
・血液による診断が開発されており、今後は血液採決による診断ができるようになってくる。
第2部 パネルディスカッション
○日本イーライリリー(株) 藤本副社長
H27年の売上高は100億ドル。そのうち24%を研究開発に投資。
神戸市おには40年以上在籍する。
国内で3300人以上
タウイメージングの研究開発中
アルツハイマー薬の臨床研究中
○くじめ内科 久次米先生
認知症サポート医、認知症早期発見システムに取り組む
長田区は高齢化率32%、長田区でできなければ他のどこでもできない。
西市民病院とかかりつけ医の連携 (予約の短縮など)
脳のすこやか健康手帳、認知症カフェなどに取り組む
○NPO法人認知症予防ネット神戸 伊藤米美理事長
早期発見と予防の重要性について
2006年より予防活動開始
2010年 NPO法人設立
住吉、御影地域で地域の認知症予防、ささえあいのまちづくり運動を展開
○有馬あんしんすこやかセンター 石原直美氏
あんしんすこやかセンターを中心に地域の方々の認知症への理解を深める研修会を開催。
<課題>
受診につなげられない。かかりつけ医へ相談がしにくい。公表することにためらいがある。
地域では参加される方が固定化する。
就労している年代の参加は難しく、認知症への理解を深めてもらう機会が少ない。
○パネルディスカッション 座長:前田先生
座長:アルツハイマーの根本の治療薬の状況は?
藤本:タウたんぱく、アミロイドβの築盛気を抑えるものと親交を抑えるもの。現在臨床試験の際中。今後、薬が出てくると選択肢が増えると考えられる。
座長:伊藤さん、活動の経費はどうされていますか?
伊藤:ボランティアですが、区の助成と、足りない分は自治会でも予算立てをしてもらっています。
座長:久次米先生、在宅を知らしめるには?
久次米:直接伝えていくしかないと思う。医師会も、在宅医の研修を始めている。(4つの区で)あと1年くらいで研修が区切りを終える予定です。
座長:地域の正しい理解を進めるためには、石原さん、どうすればよいと?
石原:正しい理解を進めるためにセンターで3年取り組んできたが、なかなか難しい。