スパコン関連シンポジウム
先月末、東大生産技術研究所で、29日30日の2日間に渡って、スパコン関連のシンポジウムが開催されました。1日目が「次世代ものづくりシンポジウム」、2日目が「イノベーション基盤シミュレーションソフトウェアの研究開発」プロジェクトシンポジウム。
これだけ書くと、何の話かわかりにくいのですが、1日目は、神戸にできる次世代スパコンをものづくり分野に戦略的に活用していくための関連シンポジウムです。2日目は、次世代スパコンも含めて、スパコン上で動作するシミュレーションソフトウェアのβバージョン(6月1日にすでにオープンにされているそうです)のお話と、適用事例の発表など。(2日目の全体のお話まで聴講しました)
シンポジウムでは、関係者を対象としているので、いきなり中身に入っていきましたが、次世代スパコンの現状としては、事業仕分けによって進め方にかなり見直しが行われています。まずは、10ペタFLOPSの達成時期をH23年11月からH24年6月に延ばしたこと。もうひとつは、「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ」の構築を行うこと。
ひとつめは分かりやすいですよね。予算が縮小されたので、開発を加速するのをやめて、目標性能の達成時期が後ろにずれたということです。
ふたつめは、次世代スパコンだけでなく、大学や独立行政法人の研究所などにあるスパコン群をネットワークでつなぎ、どこからでも次世代スパコンが使えるようにすること、また、複数のスパコンを協調して使えるようなことも含め、インフラを整えていこうというものです。インフラ構築は、ユーザによるコンソーシアムが立ちあげられ、進められることになります。
さて、シンポジウムの話に戻りますが、すごーくたくさんの方が来られていましたね。講演の中で、主催者の先生より、「HPCを使って、5年後に実際のものづくりの現場で設計手法が革新的に向上しなければ意味がない。世界をリードする、革新的な技術がHPCを利用して生み出されることを目指す。」という高い目標設定、決意が述べられました。今後、世界との競争を視野に入れた戦略分野・機関で進められていくもようです。また、大学や研究機関が保有しているソフトウェアは、設計者などからみると使い勝手が悪くて、機能が高くても実際に使えないので、利用者の目から見て使いやすく、入力なども省力化できるインターフェイスの開発が行われているようです。高性能のスパコンを使えば計算時間が何十分の1、何千分の1になるのはわかっていても、ソフトウェアやモデルの変更に何千時間もかかってしまうのでは、企業は使いませんよね。大学などがすでに保有しているソフトウェアを実用化できるように改良するプロジェクトが行われていて、6月1日にβバージョンが発表されています。今後、こうして、利用者や適用範囲を広げる活動も行われます。
神戸には、スパコンの運用母体となる理研の「計算科学研究機構」が7月1日に設置されました。活用に向けて、準備が整ってきています。
発表を聞いていて、スパコンの活用によって、ものづくりの分野では、シミュレーションの精度向上だけでなく、それに伴って新しい発見が出てくることや、インターフェイスの開発が進められていて、設計者が効率よくモデル作成できることなどが実感できました。今後に期待したいと思います。